光免疫療法の光と影

 楽天メディカルが開発している光免疫療法RM1929(AS P-1929)が、条件付き早期承認制度(少数例成績で仮承認し市販後成績を追加して再審査)で製造販売承認されたというニュースが話題です(2020.9.4)。NIH小林医師のアイデアである、EGF受容体抗体に近赤外光により活性化される光増感剤(silicon-phthalocyanine誘導体IR700)を結合した製剤と、近赤外光レザー照射カテーテルによる、医薬・医療機器複合療法であり、世界初の承認になります。

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腫瘍溶解性ウィルスによる癌治療_流行り廃りのドラマ

 遺伝子治療薬ゾルゲンスマ(乳幼児向け遺伝疾患治療薬)が薬価1.7億円(生涯単回投与)で保険適用されたことが話題です(2020.5)。遺伝子治療カテゴリーでは、ベクターとしてアデノウィルス(ゾルゲンスマでは運搬体としての粒子殻)に続き、プラスミド(アンジェスによる細胞増殖因子遺伝子製剤コラテジェン)が承認されました。その流れを受けて、残るは腫瘍溶解性ウィルスの承認待ちというトレンドのようです。しかし、トレンドには歴史的な運不運の波があります。

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治療アプリ®(CureApp)_変更承認申請はどうする?

行動変容「新しい生活様式」

 今回の新型コロナによるパンデミックにおいて、日常的に使われることばになりつつあるのが、行動変容でしょう。人々の日常的な行動様式を、新型コロナ感染拡大への対策として、感染拡大前の行動様式から、感染終息後には、新しい生活様式に変更する必要があるという趣旨で使われています。これはCureAppなどの治療アプリ®のコンセプトそのものですね。

 喫煙習慣を治療するために、ニコチンなどによる生理反応を、薬理的に調整させるのは医薬品(治療薬)の役割ですが、それが限られています。そこで、心療内科的な治療が必要で、それが行動変容になるわけです。治療アプリ®は、人々の行動に働きかけて、その行動を変化させることで、心療内科的な治療効果を期待するわけです。この行動変容に関係して、治療アプリのプログラムコードを書き換える場合に、一部変更による申請はどうなるのであろうと、気になってきました。

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旭化成ファーマの米国進出(MeltDose製剤物語)

 旭化成ファーマが米国Veloxis社の株式公開買い付けを発表しました(2019.11.25)。MeltDoseという製剤技術をもち、臓器移植時の免疫反応を抑制するタクロリムス(旧藤沢のプログラフ。特許切れ)製剤を販売している、デンマークに本社をもつ企業です。その技術力を入手するとともに、営業基盤を獲得して米国医薬品市場へ進出する橋頭保を築くためとしています。

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治療アプリ(CureApp)_薬効のない対照アプリって?

治療するアプリ

 数年前に薬機法の改定で、診断・治療にかかわるソフトウエア(アプリ)が医療機器の対象になると認められたときは(2014)、医療機器の測定ソフトのことと思っていました。そのころ、再生医療につかう細胞の状態を画像解析で判定するソフトの開発支援を行っていたこともあり、薬機法の対象になったためにソフト開発の難度(コードの管理など)があがり、手間暇が大変になるという印象でした。しかしその意義は、医薬・医療機器に並ぶ第三の治療手段として、ソフトウェア(アプリ)を開発・販売できるようにすることだったのです。

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人工血液の開発秘話(Biopure社の悲劇)

  保存・取り扱いに制限のある輸血を人口血液で置き換える試みの歴史は長く、欧米では軍による開発支援もあり、市場規模は数千億円~1.8兆円規模とも言われています(AheadIntel社市場予想)。それだけに大手製薬企業、バイオベンチャーの開発参入は多いのですが、どれも成功していません。

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